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従業員が輝くパーソナルブランディングの育て方

髙橋明美(以下髙橋):本日のパネラーは株式会社職場風土づくり代表取締役でいらっしゃいます中村英泰様、そしてNCU合同会社CEOで経営者育成研究会代表の芳永尚でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

髙橋:本日のテーマは「従業員が輝くパーソナルブランディングの育て方」ということでお話を聞いていきたいと思いますが、その前に中村社長は元々人材サービスの会社にいらしたということですが、そこから起業されるまでの経緯をお聞かせいただけますでしょうか?

中村英泰(以下中村):そうですね。カッコつけた言い方と等身大の言い方があるんですが、芳永さんの前でカッコつけるのもどうかと思いますので、等身大のほうでお話させていただきます。

ご紹介いただいたように人材サービスの会社では、働きたいという『ウォンツ(Wants)』と働いてほしいという『ニーズ(Needs)』を結びつける「マッチング」をやっていました。「人が辞めちゃうので誰か紹介してほしいんだけど」と電話を受けて「はい。わかりました」とお話を聞きに出かけて行き、人材を探してご紹介し、「はい、成約」。これでお金が入ってくる、ということを日々繰り返しやってきたのですが、僕はいつも「これをいつまで続けるんだろう」と、「違う何かがしたい」と思っていました。たまたまキャリアコンサルタントの国家資格を取った時期に、新しいプロジェクトがうまく進まないとか、そういうことが続いたんです。さらには単純なマッチングじゃダメだと思ったきっかけなのですが、今も50代の転職希望者はたくさんいますが、本当に既存のマッチングサービスで転職先が決まる人ってほんの一部なんですよ。ほとんどの人たちは経歴はあるけどそれが整理されていないから「この経歴では……」ってことで断られている。そういう人たちに仕事を提供できたら、機会を与えてあげられたらと、ずっと思っていたことを今の自分になら実現できるんじゃないかという思いで飛び出したんです。

髙橋:そういう経緯だったんですね。そんな中村社長が現在どのような事業を展開されておられるのか教えていただけますでしょうか?

中村:今日も午前中は大学で登壇だったんですけど、名刺としては全部で5枚ありまして、

一同:5枚!?

中村:某人材サービス会社の営業企画部長、研修会社では自分も登壇しますがそのeラーニングの方向性を決めるような役職に就いています。さらには第二人事部と呼んでいるのですが、中小企業は会議に外部の顧問として参加したりで、名刺の数としては5つです。

領域としてはシンプルに3つに括ることができます。1つ目は研修事業。今頃の時期(対談は10月中旬開催)は入社してからちょうど半年なのでフォローアップ研修ですね。思っていたのと現実とは違う『キャリアショック』と呼んでいるんですが、そこをどうやって整えていくか、会社のなかにちゃんと座る場所を作ってあげることなどです。新卒が入る時期は新卒研修、夏頃には階層別研修などを実施します。

2つ目はCtoCコミュニティの運用です。今まさに行なっているこの対談もそのコミュニティで芳永さんと出会ったこと、それがきっかけですよね。それに加え、キャリアコンサルタントという資格を取りたい人のトレーニングの場だったりします。

そして3つ目は組織開発です。研修をただ漠然と行なうわけではなく、6か月とか1年をかけてある一定の層を育て上げるというときに、研修の評価についての見直しをします。

1on1面談が形骸化しているという問いに対して、どうやったら生きた面談として成立するのか、面談する社員される社員が何をどうすればよいのかといったことを整えたり、様子を見ながら弱っているところを補うことを通じて、人を軸に組織を育てる、また、自分は何々屋だというパーソナルなブランディングをできるような事業をしています。

芳永尚(以下芳永):3つの領域とはいえ名刺は5つもあるわけで、こんがらがったりしませんか?

中村:最近広がり過ぎて、事業間の相関性が少し薄くなってきてます(苦笑)。

芳永:こうして見ているといろんなことを先駆けとしてやってらっしゃいますね。

髙橋:そうですよね。需要と供給のバランスを見越していらっしゃるという。

髙橋:研修の種類をいくつか述べられていましたが、こういう内容で研修してくださいと企業さんからご依頼がくるのでしょうか。それとも企業さまとの打ち合わせのなかでこういう研修がいい、というふうに決められるのでしょうか?

中村:それ大切な視点ですよね。まさに、企業さまからご依頼いただくパターンは3つほどあります。

1つ目は大枠は変わらないが担当者が変わったのでそれに適した内容に変えていくもの。

2つ目は完全に研修自体を作り直さなくてはいけないケース。担当者は変わらないけど内容を見直したいというもの。

3つ目はある会社の実例でご説明しますね。

ある会社から「弊社の社員はホウレンソウ(報告・連絡・相談)がうまくできていないからそのやり方やHOW TOを教えてほしい」という要望があったんです。研修に入る前にお願いして現場のヒアリングをすると、ハウトゥーは知っているんですよ。だけど「こんなことを言ったら(上司に)弾かれるんじゃないか」と。いわゆるボスマネジメントですよね。直属の上司の気持ちを推し測ったりとか、上司は上司で「社長はこれくらいの精度を求めるんじゃないか」と社長の気持ちを推し測っていたので、まずはそこを整えていかないといけない。そういう場合は、どれだけ道具を用意しても使えないわけで、全員を集めて「これから会社をどのように作っていくのか」と問います。そうすることで目的ができてようやく道具が使えるようになる。そういったケースは僕のもっとも得意なケースです。

髙橋:日本人の悪い癖なのかどうやらそういう忖度をしてしまうんですね。でも、ホウレンソウができない企業って意外とあるんですね。

中村:当たり前のことなんですけど、サービス業でも製造業でもいろいろな会社に行かせてもらってバックヤードなどを見ると「ホウレンソウをしっかり」みたないことが書かれてあるんですね。それは出来ている、当たり前のことをわざわざ掲示しないとすると、やっぱりそれがうまく行かないからなんでしょうね。

芳永:当たり前のことができていれば企業っていうのは成長するものですよね。人だってそうじゃありませんか。挨拶ができてコミュニケーションが取れていれば成長しますよ。でもそうじゃないのもいるんです。その最たるものが私ですよ。

中村:芳永さんは置いといて(笑)。でもそうなんですよ。当たり前だしわかっているんです。ただ、ホウレンソウもそうですが、当たり前のことって当たり前ゆえに語られていなんですね、会社のなかで。挨拶っていうのは承認のメカニズムなんです。誰もが認めてほしいんです。家を出て会社に着いたら「ようこそ」という存在承認をしてほしいわけなんですよ。そしたら「おはよう」ではなく「おはよう、高橋さん」なんです。これでようやくその人と1対1になるじゃないですか。まず来てくれたというふうに認めてもらい、その次はやっていることを認めてほしいんです。幼少の頃、僕がつかまり立ちができたら家族が「英泰、すごい!」と、「立てるようになったねー」と、これだけで認められるわけです。だけど、なぜだか歳を重ねてくると当たり前のことは当たり前に認めてもらえないんだけど、それでもやっぱりわかってほしいんですね。

 

自分が日々やっていること、たとえば会議の資料が思った以上によくできていたのに部長が何も言ってくれなかったとか。それを誰かが次の日、「おはよう、髙橋さん。昨日の会議で芳永部長、機嫌良かったよね」「そうなんですよ」ということで「よかった、認められた」となるんですね。そして最後は変化。「入社2年目で芳永部長の機嫌を損ねなかったのって髙橋さんが初めてだよ。これってすごいことなんじゃないの?」って言われるとちょっとホクホクするわけじゃないですか。これをやっていけるかってのは、物事の理、本質的なことにあらためて立ち返らないできないですし、そこから会社の文化というものが作られるんですよね。当たり前を本当の当たり前にしていくことって案外難しいんです。

髙橋:企業って大きくなればなるほど、コミュニケーションひとつをとってもきちんと取れないとかそういうことが多々あるので、そういうときは中村社長の出番、ということなんですね。

中村:そういうことです。さすがですね。

髙橋:ありがとうございます。最初に大学で登壇してきたとおっしゃっていましたが、企業だけではなく学生さんとの事業もあるんですね。

中村:僕は愛知県の春日井市に住んでいるんですが、遠隔で東京の法政大学の学生グループをゼロから立ち上げ応援していたり、直接大学に行ってキャリアの授業をしているんですが、やっぱり第二人事部として企業さんに関わっていたり大企業の方たちとコミュニティで会っていたりすると、採用や面接に関する、実際その場面では出てこない裏側の居酒屋トークになったりするんですね。それを学生に伝えて、その反応を企業の人事に伝えたりという橋渡しをさせていただいています。

この10年ほどキャリアって重要だなという認識が高まっていて、大学を卒業したら就職をするわけでが、それがゴールではなくってあくまでも通過点で、その先人生をどういうふうに彩っていくのか、かたち作っていくのか、そのためにどこで働くのか誰と何をするのかってことがとても重要になってきていて、それを企業側も求めてきています。

それに対し学生側がノーアイディアではかわいそうなので、そこを僕たちがキャリアの授業として伝えています。

彼らに伝えている言葉をそのままお話しますと、2つのことをなんらかの形で伝えようとしていて、1つ目は、そもそも最近の会社選びを自分たちも考えていかなければいけないよと。初職というのは僕たちの根底になるものなのです。たとえば僕の初職は人材業界のベンチャーだったので朝からパンフレットを持ってビルの上から下まで駆けずり回って、1件も受注が取れていないのに事務所に戻ると芳永部長から叩かれたりとか(笑)。ちょっと予定があるので帰ろうとすると「おぉ中村、ええのう。早く帰れるんか? まずは数字言ってから帰れよ」「すみません。もうちょっとやってから帰ります」みたいなことをゴリゴリにやっていて、会議では成績順に座らされて、最も成績の悪い社員は机も椅子も与えられないとか。そういう会社だったんです。さらに初職ってすごく大事なので学生にも(会社の様子を)しっかり見てこいよといっているんです。学生はブラック企業はもちろんイヤなんですが、ブラックの定義も整えていかなくてならないんですね。土日祝日休みなく働かされる、残業も際限ない、かつそれに対して手当が支払われない、そういう状況のなかでメンタルがどんどん崩れていっているのにそれをなきこととしている会社を「悪」だよねと彼らはいうんですけど、それは違うよと、それはもう論外だよと。

一概に休日出勤や残業が多いのが悪いのではなくて、自分がどこを目指すかによっては違う見方もできると。半年で一人前になって20代のうちにほかの人とは比べ物にならないくらい自分のステイタスを上げて、自信を持って売り込めるようになるためには10年かけて人を育成する会社に勤めちゃいけないんですよ。あなたが何をしたいのか、それを叶えてくれる会社なのか、そこをちゃんと見ないといけないよと。

採用担当者に対しても必ず聞かなければいけないことは「3年後に自分は何者になれるのですか?」ということ。それに対してちゃんと答えてくれない会社はパラダイムシフトが起こっていない会社である可能性が高い。なので、何者になれるかをしっかり語ってくれる、それが人事以外の部署の人でも、言葉は違えどもそれを語ってくれる会社でなければいけないよと。もうひとつは、いつ何をしていてもその先どうなるのかなんてことは予測がつかないので、学生でいられる間に自分で選択肢を作って自分で決められるようにならなきゃいけないということは繰り返し言っています。そういう自分になっていなければいけないんですね。

髙橋:実践的で生きた授業ですね。すばらしいです。

中村:ありがとうございます。

髙橋:こんな授業を私が学生の頃にやってもらっていたら困らなかったのに、と思いながら聞いていました。

 

芳永:私も初職のときは机を蹴飛ばされて「おまえ毎日なにやってんだよ!」と言われていましたからね。

 

髙橋:そんな中村社長が次世代に伝えたいことってなんでしょう。

中村:何か困ったときに尋ねられる人を3人持った方がいいということです。

答えっていうのは最終的には自分のなかにあるのですが、そこへの道を照らすのは自分じゃないんですね。自分の内側のことってわからないので照らしてくれる人がいるはずなので、そういう人と出会えると一気に推進力がつきます。今、経営者になっている方も元は従業員だったはずで、あの頃本当にしんどかったけど、あの人の一言で乗り切れたなとか、あのときあの人と出会えたから今の自分がいるんだよなとか、振り返るとそういうことがあると思うんです。人は人によって変わることができるんですね。そのためにもその3人を見つけることはとても大事なことなんです。

現代ってSNS上で人を見つけることがかんたんにできるようになりましたよね。ときには悪い人もいますが、ああこの人ならという人を見つけたら「ちょっとお話しできませんか」と声をかけてみることはできますよね。そうして波長の合う人を見つけることができたら「これからも引き続きメンターになっていただけませんか?」とお願いしてみるといいと思うんです。僕らおじさん世代は若い人に対して何かしら提供できるものがあるんですよ。

 

先日、ある学生がTwitterで知り合った人に「起業したいんですが20万出資していただけませんか?」と尋ねたら「え? 20万でいいの?」って言われたそうです。そういうのもあるみたいですよ。ま、その人はいろんな意味でちょっとすごいなと思いましたが。若者を応援したいなとか、この若者のその先に自分が関われるのはおもしろそうだなとか、そう思っている人は無限にいますよ。

髙橋:3人ですか。芳永さん、3人言えますか?

芳永:うーん。そうですねー。絞り切れないなぁー……

髙橋:それはすごいなー(笑)。中村社長、本日は貴重なお話をありがとうございました。

中村:こちらこそ。ありがとうございました。

2022年10月17日収録

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