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母数の違いと営業の在り方

  • 執筆者の写真: ncu807
    ncu807
  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

大昔の話で申し訳ないが、三十数年前に東京で飛び込み営業をしていた。


まだ右も左も分からない20代。名刺とパンフレットだけで、オフィス街を歩き回った。新規開拓の先は山ほどあって、見込み客がなくなれば手当たり次第に飛び込みをすればよかった。断られることも日常だったが、次がある、次に行けばいい。そう思えるだけの「数」があった。


どこか気楽でもあった。成果も、確率論の中にあった。数を打てば、どこかで当たる。そんな営業が成立していた。


その後、私は地元である北海道に戻った。

そこで味わったのは、まったく別の現実だった。東京と同じ感覚で営業をしても、なかなか通用しない。そもそも、訪問できる会社の数が圧倒的に少ない。もし、関係が一度切れてしまえば、次に行ける先がない。どこまでも広いはずの土地に、営業先が「ない」という感覚。これには戸惑った。


もちろん、都市部と地方では経済の規模が違う。わかってはいたつもりだったが、実際にその「差」を体感したことで、営業という仕事の本質をあらためて考えさせられた。


ちなみに、都道府県別の人口を見てみると、上位8都府県──東京都・神奈川県・大阪府・愛知県・埼玉県・千葉県・兵庫県・福岡県の総人口は約6532万人。これは、残りの39道府県を合わせた人口とほぼ同じである。


もっと言うと、面積で比べればこの8都府県は日本の国土の約9%に過ぎず、残り91%に39道府県が広がっているということになる。狭い土地に人が密集している都会。広い土地に人がまばらに暮らしている地方。


この違いが、営業における「機会の密度」そのものを左右している。


東京では、仮に一件失敗しても、明日はまた新しい会社に訪問できる。いわば「入れ替え可能」な顧客関係が成り立つ。しかし地方では、一つひとつのご縁がかけがえのないものになる。一度関係を築けば、長く丁寧に付き合う。逆に、信頼を失えば次はない。代わりが効かないのだ。


こうした環境では、「数」よりも「質」が問われる。そして、スピードよりも「信頼の積み重ね」が重要になる。営業というより、関係づくりそのもの。そんな感覚に近い。


東京で営業の「数」を学び、北海道で「関係性」の深さを知った。


どちらが良い、悪いという話ではない。ただ、市場の構造や母数の違いによって、求められるスタイルが変わってくることは確かだ。そして、その変化に気づけるかどうかが、営業という仕事における「成熟」なのかもしれない。


人が少ないということは、不利であると同時に、チャンスでもある。


限られた市場だからこそ、一つひとつの出会いが濃くなる。広さの中に、深さを見出す。そんな営みが、これからの地方での働き方やビジネスのヒントになるのではないだろうか。


あなたの営業は、「数」と「関係性」のどちらを重視してますか?



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