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蕎麦と学生

  • 執筆者の写真: ncu807
    ncu807
  • 8月30日
  • 読了時間: 3分

札幌に仕事で来て函館に帰ろうとしていた。


定山渓方面に向け車を走らせているとTシャツと短パンの学生らしき男子が段ボール紙を掲げている。


「喜茂別方面 乗せてください」


即断即決。

車を停めて言った。


「おおお 乗れ乗れ!」


それから事情聴取を始めた。

どこからきてどこに行きたいか?

矢継ぎ早に聞かれる学生は後でこう言っていた。


もしかしたらヤバい車に乗っていしまった??


そうは言ってもまず飯だ。


「腹が減ってるだろう?

 まずモスでも食うか?」


ドライブスルーで好きなものを買わせ中山峠に向かう頃にはいろいろ白状、いや聞き出すことができた。


彼は神奈川から来た学生でサイクリングクラブで北海道に来たという。


釧路に自転車を送りそこからみんなで札幌まで自転車で来て解散したらしい。


彼だけはヒッチハイクで神奈川の藤沢まで一人帰ろうとしていて私に捕まった。


中山峠に差し掛かると

「ここでは揚げ芋を食え!」

とまだ満腹だという彼に無理やり食うことを強要した。

京極の湧水公園に寄り道して温泉に入りソフトクリームを一緒に食べた。


段ボールの喜茂別は適当に書いたというから函館まで連行して家に泊めてやることにした


翌朝何か予定があるか聞くと観光したいと抜かしやがる。


「金もない癖に生意気だ。カバン持ちをしろ!」とズボンを貸してやり軽いかばんを持たせた。


「まず函館市役所のフルコースに連れていく!」


市長の部屋へ飛び込み対応してくれた秘書課長に当時進めていた助成金講演会の支援要請をした。


そのあと最上階の喫茶室で一緒にパフェを食べた。


学生は鼻の穴を膨らませ興奮し


「芳永さんおもしろいです。こんなの初めてです。」と連発していた。


頭に乗った私はその足で渡島支庁へ。


当時副支庁長はオヤジの部下だった人で幼少期から知っていた。


「尚ちゃん 大きくなったね。

 お父さんは元気?」


副支庁長にも講演会の趣旨説明をして帰った。


「おもろしろっす!

 すごいっす!

 こんな経験は初めてです!」


学生はさらに喜んでくれた。


私はそいつがかわいくて仕方なかった。

自分の息子もいつかこうして旅をして出会った人に可愛がられてほしいと思った。


彼は一人で翌朝フェリー乗り場まで行ってまたヒッチハイクすると言った。


もちろんフェリー乗り場まで車で送った。


「ここでお別れだ。

 これはうちの会社の携帯電話だ。

 どうしても困った時だけ使え。

 それ以外は使うなよ。」


学生は何度も何度も頭を下げて挨拶していた。


別れた後の車ではやけにさみしい気持ちになった。


数日経って私の携帯が鳴った。


「芳永さん ありがとうございます。

 無事帰りつきました。」


また何かあったら電話しろよ!


と電話を切った私の顔はちょっとほころんでいた。


後日、送り返された携帯電話は一度も使われてなかった。


それから一ヶ月後に学生は携帯を買って私に電話してきた。


さらに一月後に東京出張の用事ができたから彼に電話してみた。


そうしたら


どうしても会いたい、出張先に来る、と言う。仕方ないから東京で会うことにした。


「芳永さんに会って人生観が変わりました。

 大学はやめて父の蕎麦屋を継ぎます。

 専門学校に行ってます。」


私のせいじゃない。自己責任でね。

と笑うしかなかった。


あれからもうかなり立つ。

学生は40代半ばだろう。


藤沢のそばをいつか食べてみたい。



ree

 
 
 

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