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「医食同源」の心で次代を見据えた先進的な教育活動とは?

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進行・福田美耶(以下福田):第112回経営者対談をはじめます。本日は学校法人青池グループ理事長・青池浩生様をお迎えし、『医食同源の心で時代を見据えた先進的な教育活動とは』をテーマにお送りいたします。

 

青池様は早稲田大学ご卒業後、民間企業勤務を経て2001年にご両親とともに学校法人青池学園を設立されました。2013年より理事長、現在福井県、富山県に四つの専門学校と公益通信制高校、またフィリピンに語学学校2校を運営。食と健康、医療と福祉は今後ますます人材が求められる重要な分野になります。学校法人青池学園は設立以来一貫して医食同源をテーマとし地域に根差した特色あるカリキュラムを展開されており、より豊かな社会を築くための精神的な教育活動を推進中です。

 

本日アシスタントを務めさせていただきます、私、株式会社MISION(ミシオン)の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 

芳永尚(以下芳永):青池さん、本日はどうもありがとうございます。さっそくですが、青池さんってどんな人なんでしょうか?(笑)

 

青池浩生(以下青池):私は福井の片田舎、小浜市というところで生まれて高校まで住んでいました。大学は東京でしたので、卒業後そのまま東京で就職しました。

そんなあるとき、両親から「学校を創るから帰って来い」という話がありました。もともとうちの家、といいますか母親は料理教室をずっと長くやっていましたが、当然母親の趣味でそれで終わるんだろうなと思っていたんです。が、ある日突然「学校創る」という話が出てまいりまして。

「どういう人なんですか?」っていう問いの答えになるかわかりませんが、私はいろんなことに興味があって、一つのことをずっとやるのはあまり得意なタイプじゃなく、そういうこともあり「じゃあやってみようか」ということになりました。

じゃあ調理の学校でもやるのかなと思っていたのですが「介護の学校やりたい」と。介護って、父親はサラリーマン社長ですし母親は料理教室、私も全然違う業種で誰一人医療や福祉の専門家がいない。そんななかでいきなり介護という話になり。「大丈夫? できるの?」と、そんな感じで帰ったのを思い出します。

 

芳永:どうして介護の学校を興す話になったのでしょう?

 

青池:先ほど冒頭でご紹介いただいたのですが、『医食同源』という言葉があって何かそこに通じているのか、食べることで人の体を作ったり、食べるものによって健康にも、また病気にもなります。よくよく考えてみると、その後介護の学校から始まって、また調理(料理)をやって、リハビリをやったり、一貫して食とか健康・福祉・医療に注目をして学校を作ってきました。そのあたり、母親は料理を教えるなかで食だけではなく食を通じてより豊かな健康な体づくりとかそういったことも考えていたのかなと。あと、うちの祖父とその兄弟たちがみんな医者だったという、そういうこともルーツとしてはあると思うのですが、当時は「なんで?」と(笑)。

 

(一同笑)

 

芳永:凄いですね。そんな形でスタートされた学校法人ですが、現在はどのような展開をされていらっしゃるのでしょう?

 

青池:福井と富山で4校、専門学校をさせていただいています。調理、製菓、それから介護、あと理学療法士・作業療法士の養成。あと、日本語学校を一つ日本語学科としてやっていまして、これは海外から来る留学生たちが日本語を学んで、その後専門学校や大学に進学したりと、そんな学校です。

最近始めた通信制高校が一つあって、これは中等教育になるんですけれども広域で全国をカバーするようなカタチの通信制高校です。

 

芳永:各学校での動きとしてはどのような展開になっていらっしゃるのか、もう少し具体的に教えていただけますか?

 

青池:福井県小浜市は現在では人口が3万人に満たないのですが、そういう小さい町で介護の学校として始めまして、その後小浜市近くの美浜町というやはり少子化に悩んでいる町から学校を誘致したいというお話をいただきリハビリの学校を作らせていただきました。そんなこんなで福井県でリハビリと調理また介護の学校を開校させていただいたところ、富山県の事業開発で医療福祉系の街づくりで中心市街地に教育機関を呼びたいという話があり、われわれにお声がけいただき、2017年に開校しました。

 

そういう時代もあったのですが、現在少子化が進むなかでの学校経営は非常に難しいです。右肩下がりの産業、衰退産業です。ただ、社会に必要とされる人材を養成していくという非常に大事な役割をわれわれは担っていると思っています。今はどの業界も人手不足で、人が必要とされているなかで一人でも多くの専門的な人材を世のなかに送っていくという非常に大事な使命を持っています。そのためには海外からの留学生も引き受け、ただ単に右から左に送るのではなくそのなかで日本語教育、専門的な技術知識の教育をさせていただいて業界につなげることに、今チャレンジをさせていただいているというところです。

 

また、多様性を持ったお子さんたちや学び自体の多様化で、今なかなか公教育、全日制の学校ではやりにくいという状況があります。それをわれわれ私学で、また通信制の学びであれば受け皿となりやりたいことをやれるような環境を提供できるだろうということでそちらにもチャレンジをさせていただいております。

 

芳永:通信制のイメージについてはどうなんでしょう?

 

青池:子どもの数は減っていますので当然全体は減っているのですが、全日制の学校に行く数が減っていって通信制の高校に行く数が増えているという状況はありますので、そういう意味で言うと通信制に対するイメージも変わってきています。

 

芳永:今日のテーマの医食同源の心という部分で言いますと、今そこを中心にした教育活動をされていらっしゃいますが、具体的なお取り組みを教えていただけますか?

 

青池:うちの学校の初代理事長が母親なんです。母親が料理教室から始めてからちょうど2020年に50周年を迎えました。その間、食や医療も大事ですが『地域』というのがすごく大事になってきます。そこでどういうものが取れているか、どういうものを食べているかがすごく大事になってきますので、地域の漁業者や農家の方、要は生産者の方ですね。地域の生産者の方たちと連携をした学び、取り組みというのを積極的にさせていただいています。

一例をあげますと富山県の地元の漁協組合と連携をさせていただき、地域の小学生たちに地域で取れたものを提供する。そのなかに我が校の学生が入って活動させていただいています。漁で取れたホタルイカを漁協さんが私どもの学校に搬入し下処理がされます。それも学生の学びになりますし下処理をして調理したものを今度小学校に持っていって生徒さんたちに食べていただく。地域で取れたものをうちの学校で調理をして子どもたちに食べてもらうことでそういうことを知っていただくという活動です。ほかにもいろいろな生産者の方たちとプロジェクトを立ち上げて取り組んでいます。

 

芳永:なるほど、おいしそうですね。そういえば元日に地震がありましたが、その影響などはいかがだったのでしょう?

 

青池:やはり富山がかなり揺れまして、(震度)6弱だったと思いますですが、学校の壁にヒビが入ったり大きなオーブンが落ちて壊れたり。私もそのとき富山にいたのですが、これは本当に大丈夫かなってくらい揺れました。その後余震もありましたし。すぐに学校に様子を見に行ったら漏水があったり、これ授業再開できるかなと不安だったのですが翌週すぐにライフラインは業者さんに来ていただき、あと壁や図書が全部崩れたりっていうのは安全を確保したうえで支障のない範囲で使える教室から使っていって、3月に卒業する卒業年次の学生さんたちもいますので授業は止めないようにしました。今はようやく地震で傷んだところはほぼほぼ修繕された感じですね。

 

芳永:そうでしたか。今まさに少子高齢化の時代で学校法人の運営は大変だと思うんですが、そんななかでも地域に根ざしてもう25周年になろうとしている。次世代を担う経営者の輩出もされている青池社長から若い経営者の方々に向けて何かひと言いただけますでしょうか?

 

青池:私自身がこれまで生きてきて、学校経営に携わっているなかで常に考えていたのが生徒・学生のために何ができるだろうということです。そのためには、やはり社会の変化に合わせてわれわれ自身も変わっていかなきゃいけないと思っています。この25年間、両親と学校を始めて、途中両親が他界して今私がもう12年間理事長をさせていただいていますが、いろいろチャレンジをしてきた、動いてきたなと思います。われわれ実学を教える専門学校は社会に役立つ技術とか知識、国家資格を取っていただく学校であるということもありますが、社会の大きな流れとか変革とかそういったものに合わせて学びのあり方を変えています。

教育はよく閉鎖的だと言われます。学校や学校の先生は変わらないものの代表みたいに言われますが、それを意識して変えてきたという自負はあります。なにかにチャレンジするっていうことは当然リスクがつきまとうことなんですが、動かないで守ることも同じぐらいリスクはあると思いますし、ひょっとするとそれ以上かもしれません。

そういう時代ですので、これはチャンスと思ったら果敢にチャレンジしていただきたいなと。もしかしたら失敗するかもしれないけど、失敗からもいろいろ今後に役立つことを得られることもあります。われわれには学生がおりますので、学生に迷惑をかけるようなチャレンジとか学校そのものの経営的な基盤を損なうようなことはやりませんが、リスクも考えやれる範囲でチャレンジすることは常に意識してやってきましたので、やはりチャレンジをして可能性に向かって常に動いていただきたいというふうに思います。『迷ったらやる』が私の座右の銘です(笑)。

 

福田:私には10歳の息子がおりまして、教育ってすごく身近なテーマなんです。私が勉強してきたことと、これから必要になってくることって本当に変わって来ているなと感じています。お話のなかにもあったように青池学園さんはいろいろチャレンジされていらっしゃいますが、オンラインの教育について教えていただけますでしょうか?

 

青池:オンラインの教育ということですと、うちは今通信制高校を展開させていただいております。この通信制高校のなかで2020年に独自にプラットフォームを作りまして、そのなかですべての学びが完結できるようにしています。要は通学しなくてもオンライン教育もオンデマンドも含めて出席管理・成績管理などの各種ダッシュボード機能も備えて、生徒一人一人がどういう学びをしているか、どれくらい学んでいるかということも検証できるシステムが稼働しています。今はもうAIの時代ですが、VR/メタバースの環境もシステムに組み入れて、よりリアルに近いカタチで子どもと先生が学びを深めるということにもチャレンジをさせていただいております。

 

福田:オンラインよりもよりリアルな教育体験ができるメタバースってすごく新しいなって思いました。

 

青池:自分のアバターを作ってそのアバターで話をするんですね。オンライン画面に顔を出すのが苦手っていう生徒さんもいます。通信制に通われる生徒さんには自分の顔を晒したくない方もおられます。そういう生徒さんにとってはVRのなかだからこそ自分をさらけ出せるというか居心地がいい。それが将来的にリアルにつながるといいなと思ってやっています。まずは入り口としてそこから入りわれわれと接点を持っていただき、そこからさらによりリアルな社会に一歩を踏み出せるきっかけとしてのVRというように考えています。

ただ、やっぱりVRというのはかなり開発コストがかかりますし、よりリアルなものを追い求めれば追い求めるほど現実とちょっと合わなくなってくる。高価な専用ゴーグルを生徒さん一人一人に購入していただくのか? とかそういう問題が出てきますので、ここは2020年以来の課題でもあります。

 

福田:採算バランスって本当に難しいですよね。ありがとうございます。

青池学園の今後のビジョン、目指されているところを教えていただけますか?

 

青池: 2020年に創立50周年を迎えまして、そのときに学園グループの新たなビジョンというのを作りました。『一人ひとりが輝く未来に、教育で社会を豊かにする』。われわれは一人の子も取り残さない教育を目指していこうと考えておりますし、その子たちが本当に生き生きと社会のなかで活躍をする、キラキラと輝いてやりたいことがやれるような環境とか学びを提供していきたいと、学校としてもグループとしても考えています。より豊かな社会づくりにその子らが寄与していけたらいいなと思っています。われれわれでなければできない教育って何なのかっていうのを突き詰めて、グループ全体として取り組んでいきたいと思っています。

富山県南砺市に閉校した高校があるのですが、昨年南砺市と協定を結びましてそこを新しく復興するという取り組みをさせていただいています。今後閉校する学校がどんどんと増え、そうなった学校をどうするのかという問題が出てくるでしょう。それに対して、学校は学校として使ってあげるのが一番いいんじゃないかと、何かしらの教育機関として学びの場としてその地域に残していくことができるんじゃないかというふうに思っていますので、われわれが提言できるようなチャレンジをしていきたいと思っています。

 

芳永:海外の展開はどうでしょうか?

 

青池:フィリピンに2つあります。フィリピンのかたが日本語を学び、また日本人が英語を学ぶというインタラクティブな教育をしている学校なのですが、フィリピンのルソン島マニラから1時間半ぐらいのところにあるタガイタイ、それとセブから1時間ぐらいフェリーで行ったボホールという島ですね。そこに学んでいるフィリピンの学生さんたちにも将来日本で働くチャンスを提供していきたいなと思っておりますし、あとは日本の若者たちにも外に出て広い世界を知っていただくために英語を学んでいただいて、よりチャンスが広がるような拠点としても考えているので両方ですよね。どちらか一方ではなくインタラクティブな教育をやっていきたいなと思っています。

 

芳永:国内外合わせてまだまだチャレンジですね。

 

青池:はい、チャレンジです。フィリピンって言えば青池学園と言われるぐらいになるのも戦略としてはいいのかなって。もちろんカントリーリスクはどこの国に行ってもあると思うのですが、比較的過去の歴史を見ても親日国ですし、英語がやはり公用語で、第一言語はタガログ語とかビサヤ語って言われる言葉なんですけれども第二言語としてフィリピンの方たちは英語をみなさんしゃべることができますので。

 

福田:先ほど一人の子も取り残さないっておっしゃっておられましたが、これ経営とのバランスって大変難しいテーマだろうなって、すごくコストもかかるんじゃないかなと思っていまして、大変厳しいところにチャレンジしつつビジョンを掲げていらっしゃるんだなっていうふうに感じました。

あと、私は人材紹介を生業としているのですが、労働人口がどんどん減っていることを毎日肌で感じていまして、なので専門学校から即戦力というか手に職をつけた格好で卒業される若い方を育てていらっしゃるというのは本当にどれほど社会貢献になっている事業なのかと今日あらためてすごく感じました。ありがとうございます!

 

青池:ありがとうございます。もともと通信制高校を始めたのもやはりこの一人の子も取り残さないっていうのが私のなかですごく大事なキーワードだったので、もちろん入学しても辞めていく子というのはいます。でも、そこをあきらめてしまうとすべてのものを投げ出すというか失うような気がして。うちの学校という視点では、やはりどんな状態であっても生徒さん学生さんのためにできることはやりきる。それがわれわれのビジョンとして大事なんです。学校って生徒・学生のためにある場所ですので全スタッフが『すべては生徒・学生のために』ということを共有するようにしています。

現実的なことを考えますと、日本で働き手を増やしていくにはやはり海外の留学生の方に力を貸していただかないといけないと思います。であれば、来るかたたちにとっても良い環境でありたいというふうに思いますので、そういった意味でもわれわれの学校は海外にも展開させていただいて、われわれがしっかりと責任を持てる、果たせるような形で教育をさせていただいて、日本の介護施設であったりホテル・レストランといったところにしっかりと日本語と調理技術また介護技術を学んだ学生をお届けしていく取り組みをさせていただきます。

フィリピンへ行くとびっくりしますよ。子どもの数が多いんです。彼ら彼女らにとっても日本に行けるっていうのは一つの大きなチャンスですので、われわれはそういう環境をまず学校として作っていかなければと、まさにチャレンジをさせていただいています。

 

芳永:本日はすばらしいお話、本当にどうもありがとうございました。

 

青池:ありがとうございました。

2024年8月9日収録

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