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よりよく豊かに生きるために予防医学ができること

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司会・髙橋明美(以下髙橋) :第108回経営者対談を始めさせていただきます。本日のゲストは株式会社ウェルネス代表取締役、中田航太郎様でございます。どうぞよろしくお願いいたします。そしてNCU合同会社CEOで経営者育成研究会の芳永尚代表、進行は私高橋が務めさせていただきます。

ここでかんたんに中田氏のご紹介をさせていただきます。

1991年千葉県生まれ。幼少期をピッツバークで過ごされ、4歳から医師を目指しました。東京医科士科大学医学部卒業後、初期研修を経て救急総合診療科医として勤務されました。そんななか、予防医学の普及と医療アクセシビリティ向上を目指し、2018年6月に株式会社ウェルネスを創業されました。医療の現在、そして未来、どんなお話が聞けますでしょうか。ここからは芳永代表、お願いいたします。

 

芳永尚(以下芳永):中田社長、本日はどうもありがとうございます。起業家ではありますが、そのまえにお医者さんなんですね?

 

中田航太郎(以下中田):(笑)はい。そうです。

 

芳永:起業までの経緯を詳しく伺ってもよろしいですか?

 

中田:医療の現場にいて「予防医療ってめっちゃ大事だな」って思ったのがきっかけです。日本の医療というのは病気を治すという方向で進歩してきましたし、みなさんの認知も「お医者さんは病気を治してくれる人」という感覚だと思うんですが、本来の医療の目的というのは病気を治すことじゃなくて、『健康な期間を最大化する』ことなんです。健康に人生を全うしてもらうっていうことが医療の持つ意味だと考えたときに、病気を治す技術を高めるということはもちろん医者としてね崇高なことだと思うのですが、それでも助けられるには限界があると現場で感じていたんです。それでやっぱり予防医療がもっと普及していって助けられるものは助けていかないと、と。日本の病院で予防医療は大事だと言い続けていたとしてもそこに来る人たちはすでに病気になってしまっている方たちなので、そこで続けていても自分のビジョンは実現できないなと思いました。自分でクリニックを開業して院長としてやっても助けられる人は1000人とか2000人とかですよね。 会社というカタチで仕組化していけば何千万人、何億人と助けられる。本来、予防医療をやるべきなのにやれていない人は何億人と世のなかにはいるはずだと。そういうことで起業しました。

 

芳永:すごいですね。でも実際に起業しようとした際にはいろいろ壁があったのではありませんか?

 

中田:まあ、ビジネスをやったことないですから(笑)。最初からプロダクトが当たるわけもなく。不発に終わったプロダクトもたくさんありますし。まあ人のマネジメントとか、スケールのスピードを間違えてみたいなこともありますし。なんですけど、根本的な思想としては、僕は予防医療とやっているくらいなので、経営も予防的な思考でやるんですよね。

リスクを考えながら経営しているので、小さい課題は常に起こりますけど、「やべえ!」みたいなことにはなっていないかもしれませんね。このままいったら半年後こうなりそうだぞと、先を見通して早めに手打つことをやれているかもしれません。

 

芳永:では、この6年間はけっこう順調に来てる感じですか?

 

中田:そうですね。ポジティブなので順調かなって思ってます。

 

芳永:今実際にやられてる事業をもう少し詳しくお話しいただけますか?

 

中田:株式会社ウェルネスと言います。ウェルネス(Wellness)っていう言葉、最近少しずつ普及してきたと思いますが、健康プラスアルファみたいな意味ですね。豊かな人生みたいな意味で今日のテーマでもありますが。

今までお医者さんは「ヘルス、病気がないこと」を目指してたんですが、僕らは病気がないのは大前提でさらに心理的にも豊かで生き生きと働けて、アクティブに自分の健康に自信がある状態を目指す会社ということでウェルネスという社名にしました。2018年に立ち上げて日本生命さんとか博報堂さんとか、けっこう大きい会社さんにも仲間になってもらいながら進めています。

ビジョンはさっきお話ししたとおり予防医学というのを世の中に普及させて、死ぬときにみんながいい人生だったなと思って死ねる世界を作りたいというものです。人間はいつかは死ぬんですけど、けっこう多くの人があのとき検査しとけば、あの症状が出たときにすぐ病院行っておけば、もっと家族との時間を過ごせばよかったとか、いろいろ後悔を残すんですよね。それって突然そういう病気が発覚したり突然倒れたりするからであってこれを予防的に自分の体を客観的に管理して、それでもいつかは亡くなるんですけど健康でいられる期間を伸ばしたり、あるいは自分が死ぬタイミングを事前に予測してちゃんと死ぬ準備をして家族との時間をゆっくり過ごしたり、次代に残すものを残したり準備をして死ねると満足のいく死になると思うんです。そういうことをできる世界を作ろうというのが会社のビジョンです。

 

特にどこからアプローチしていくかというと、僕らはいわゆる働く世代ですよね。忙しいなかで仕事、家事などやることがあります。そのなかで健康って大事だと頭で分かっていても緊急性は高くないじゃないですか。そのなかでいかに体に課題が顕在化する前から取り組むということにアプローチしている会社で、20代から60・70代ぐらいまでのアクティブ世代というところに予防医療を提供するというのをミッションにしています。

 

今から100年くらい前の死因の多くはガンではないんですね。血核とか感染症だったんですけれども、今ってご存知のとおり半分以上の人がガン、心疾患、脳の病気とか脳卒中なんですよ。なんでこういう病気が増えているかというと、生活習慣が変わったというのが大前提なんです。また、なんでこれらの病気が強いかというと、サイレントキラー(Silent Killer)って言って症状が出ないんですよ。自分では健康だと思っている。実は体のなかで病気が進んでいて「おかしいぞ」と思って病院に行くと「もう手遅れです」という構造なんですね。本来は体調が良いうちから体を客観的に見て早期に発見したり、そもそも病気を防ぐための生活習慣を自分に最適化していくべきなんですけど、それがなかなかできていないので結局病気が進行した状態から医療を始める。

僕らは医療のモデル自体を変えようと思っています。今は病院にお医者さんがいて、そこに体調がおかしいと思った人が来て何とかするっていうモデルです。僕らは、医者は健康なうちから対象の人と向き合い、健康な期間を最大化するための伴走者となる存在にしようと。もう医者のモデル自体をガラッと変えようとしています。

 

次に、どんな予防かというところですが、僕らがやっているのはパーソナライズ予防医療です。基本的に日本の医療はすごく素敵なモデルなんですが、どちらかというと全員が平等に同じものを受けることでなるべくたくさんの人を救いましょうという格好で発展しています。ただ、僕が死ぬリスクを最小化したいと思ったら一般的に薦められている健康診断だけでは当然不足していまして、自分がどういう病気になりやすいかというのをデータで管理して、たとえば自分は膵臓ガンになるリスクが高いから膵臓の検査をこういう頻度で受けていこうとか戦略的に予防をやっていかないといけない。なんとなくみんながやってることってやってても見逃されちゃったりとかするんですよね。そこを個別化していくことに着手している会社です。

 

世界的にもこの医療とかヘルスケアっていうのはパーソナライズされています。アメリカだと本当に1000億円を超えるような会社がけっこう出てきています。データを活用してそもそも病気にならないためにパーソナライズされた予防医療をという流れがあります。

海外では病気になった時点でお金を払って治療を受けるということではなく、サブスクリプションで医療に対しても定期的にお金を払って自分の体のことを考えてくれるお医者さんといっしょに将来のリスク予測をしながらしっかり予防に取り組むカルチャーができています。別に病気になったからではなく健康を維持するためにお医者さんと定期的にコミュニケーションをとって体を維持していくそういう世界になってきています。

 

パーソナライズ予防で肝になるのは、人の体の情報です。家族がどんな病気で死んだとか、直近の採血でどうでしたとか、生活習慣では今どれぐらい運動しててどれぐらい寝てて食事ではどういうのを食べてるんですかといった情報だったり、遺伝子のデータだったりとかバラバラに管理されているんですけれども、こういうデータを全部集約できるプラットフォームを作っています。そこに溜まったデータを一緒に見てくれるお医者さんがついて、「◯◯さんの場合はこういうリスクが高いので、こういう食事をとりましょう、サプリメントをこういうものを選びましょう、人間ドックを受けるときにはこの検査とこの検査をオプションでつけた方がいいですよ」みたいなのを個別にアドバイスして見逃しを防いだり、そもそも病気になるリスクを減らすことにチャレンジしています。

実際我々のサービスを利用していただいているクライアントさんのなかにも、今まで一般的な人間ドックをちゃんと受けていたのですが、我々がアドバイスをしてその人のリスクの高い病気の検査を受けていただいたらガンが見つかったとか、そういう事例も出てきてますのでやっぱり個別化していかないと見逃してしまうことがあります。

 

今メインのプロダクトの対象者は経営者さんたちです。自分が倒れたら自分ももちろん辛いし家族も辛いんですけど、そこで働いている従業員さんたちもめちゃめちゃ困る仕事だと思うので社長が健康を維持するってある意味社会にとってすごく大事なことなのでそこをなるべく効率的にできるようなプロダクトということで社長のパーソナルドクターというものです。

健康データを活用しながらよりレベルの高い予防医療を提供して倒れるリスクを減らすというところと、あとみなさんご多忙で朝から夜までスケジュールが詰まっていたりしますので、何か気になることがあればミーティングの合間のちょっとした空き時間に、お医者さんに「昨日からここがちょっと痛いんだけど」とか「こういう症状があるんだけど病院行った方がいいか」とか「市販薬なら何がいいか」とかそういう相談ができるサービスになっています。

仕組みとしての予防医療と忙しいなかでも医者と常にコミュニケーションを取れる環境、この『メンバーシップ』が主力のサービスで500名くらいの経営者さんをサポートしています。パーソナルドクターとして、四半期に1回くらいの定期的な面談をしつつ、人間ドックをカスタマイズしてオーダーメイドで受けていただいて、自分のリスクの高い病気を見逃されないことをちゃんとテストして、そのデータをしっかりと蓄積していきます。もちろんそのときに病気の有無をチェックすることが大事なんですが、データを貯めていくことで「自分の臓器にはこういう傾向がある」っていうのが分かってきますのでそのデータを活用してリスクを予測して早め早めに手を打っていくようなことをやってます。

経営と同じですね。経営も財務諸表とか見ないと感覚だけの経営になっちゃうと思うんですけど、数字を見ることでここが課題だと見えると思うんです。健康もまったく同じなのになぜか健康は感覚だけでやる人が多いんですよね。

(一同笑)

 

これ飲むと体調がいい気がするとか、友だちがこれいいって言ってたからやってみようとか、でもこれ経営では多分みなさんやらないですよね。うちの会社にこのマーケティング施策は合わないと思うんだよねって意識すると思うんですけれども、なぜか健康だけはみんな感覚でやっちゃう。ここをデータでできるようにしていこうっていうことです。

 

面談・検査はデータを管理してデータも全部ダッシュボード上に溜まっていくようになってまして、今病気があるかないかだけではなくて、過去の経緯などからどの臓器の数値がどう変化していって、リスクがあるとしたらどういうところに出てくるのかとか、それに応じて次の人間ドックでどの検査を受けるべきかをドクターがテキスト化しています。

このデータがすべてアプリ上に溜まるので世界の一流の医者の意見をどこに住んでいても見られるような形になっているため、海外に住んでいる経営者の方にも使っていただいています。クラウドを活用することで世界のどこにいてもできますし、ただ病気があるかないかをチェックするだけではなくデータを活用して症状のリストを予測して最適な予防を戦略的にやることができます。これは月額で月額3万円とか月額5万円とかパーソナルトレーナーをつけるのと同じぐらいの価格感でパーソナルドクターの診断が受けられますというプログラムになっています。

 

芳永:もう500人もユーザーさんがいるんですか?

 

中田:はい。3年ちょっとぐらいでですが。

 

芳永:おぉー、すごいですね。また相当注目も集められて。

 

中田:少しずつふつふつと認知が広がってきたという感じでして。これから一気に仕掛けに行きたいなと思ってます。もうパーソナルドクターっていうのが当たり前になるようにしていきたいですね。

 

芳永:最近、資金調達もされたそうですね。

 

中田:はい。3億円弱のファイナンスをしまして、そのお金を使って優秀な仲間を集めて仕組化を促進したり、よりパーソナルドクター予防医療というものの認知を広げるためのマーケティングに活用したりとか。

 

芳永:今年はもうさらにグッといきますね

 

中田:そうですね。

 

(一同笑)

 

芳永:そんな中田社長ですが、中田社長自体がお若いので次の世代に向けてっていうのも何なんですが、経営者として一言いただけますか?

 

中田:仕事柄いろんな経営者さんとお会いします。生き生きとしている経営者さんの特徴は、自分がやりたいことや信じていることをやっている人が多いことです。儲かるという理由でやった人たちは、その事業がうまくいかなくなったり、売却しちゃった後に急に虚脱感に襲われて何もやることがなくなってしまうことが多いように見受けます。経営は何をするかによると思うのですが、自分がこういう世界になったらいいなとか、こういうものができたらいいなっていうところに注力するものだと思っていますので、自分がやりたいことに取り組むのがいいんじゃないかなって思いますね。逆にそれを実現する方法は今いくらでもありますので世の常識にとらわれずに、というのがすごく大事な気がしますね

 

芳永:ありがとうございます。そんな中田社長を応援するのが私の仕事でございます。

 

中田:ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いいたします。

 

髙橋:もう、はぁーってため息つきながらお話をお伺いしてたんですけれども、そもそもこの予防医療って国内で中田社長みたいなお取り組みをされている方ってほかにいらっしゃるんでしょうか?

 

中田:ほとんどないに等しいでしょうね。人間ドックみたいなものはもちろんありますよね。人間ドックのなかにも一般的なものから、いわゆる富裕層向けのたくさん検査を受けるような人間ドックというのはありますけれどもそのデータを蓄積して将来リスク予測してパーソナライズされた予防に生かすみたいなところまで行なっている会社は多分国内ではまだないんじゃないかなと思います。

 

髙橋:やっぱり予防医療がどれだけ大切かっていうところが、やっぱりドクターというお立場からその重要性を感じていらっしゃるんだと思うんですが。

 

芳永:よく定期健診に行っても結局なんにも引っかからなくて、で、引っかかったときにはもうとんでもない状態だとかね、さっきの話でもありましたよね。

 

中田:その人の健康データがどんどん溜まっていく仕組みになっているんですけれど、それを見ながら過去の傾向などから、「◯◯さんの場合肝臓の数字にこういうものが出てきていてこれの原因としてはこうこうこういう病気の可能性が考えられますので、次の検査ではここもチェックしてみましょう」と。人間ドックを選ぶところですよね。今まではなんとなく受けに行くという感じだと思うんですがそうではなくてちゃんと自分のリスクを知ったうえで受けないと見逃されちゃうので、そういうのをデータから考えてオーダーメイドでやっていくといきます。

 

髙橋:人間ドックを受ける場所というのもおすすめしてくださるわけでしょうか?

 

中田:そうですね。東京・名古屋・大阪・北海道に連携している医療機関がありまして、そこで受けていただけるようにしています。

 

髙橋:そういうところまでサポートしてくださるということなんですね。

24時間の専門医によるサポートってすごくないですか? 可能なんだろうか、どういうふうにされているんだろうかと。

 

中田:チーム体制です。メディカルケアチームっていうのがありまして、メイン担当のドクターと全体を見るチーフドクター、それをサポートするナースがチャットルームに入っていて、アラートを拾って対応するという感じになります。

ただ、基本的には我々のコンセプトは予防医療なので、もう明らかにおかしいときは救急車呼ぶじゃないですか。なので「これは病院に行った方がいいんだろうか?」と何か違和感があるぐらいのタイミングで相談できるっていうところが我々の価値になりますので、相談のハードルを低くしている分緊急の状態の人ってのは少ないんです。どちらかと言えば

気軽に聞いておけるっていうもので、打ち合わせが終わったら結果が返って来ているものなのでそれが全然チームで実現できるんです。

 

芳永:たとえば、いやあ、実は3日ぐらい前からなんとなく胃もたれがするだよね、以前胃もたれしたときは病院に行かなきゃならなかったんだけどどうだろう? とかっていう相談ができると。

 

中田:おっしゃるとおりです。今の相談でいうと、それもやはり人によって症状によって考えることが変わってきます。実は20代後半の経営者で、僕、一人助けた人がいるんです。「胃もたれがあります、お腹痛い、違和感があるんです」みたいな話だったんですけれども、チャットでヒアリングしていくと、「お腹が空いているときだけ痛かったんですよね。で、ご飯を食べた後、楽になるんですよ」と。それってそんなこともあるかぐらいな感じだと思うんですけど、医者からすれば十二指腸潰瘍という病気を疑う症状なんですね。それはおかしいからすぐ病院に行った方がいいと言って、次の日カメラを入れたら十二指腸に穴が開く直前だったんですよね。穴が開いてしまうと10%から30%は死んでしまうので。

 

一同:ええーーーっ、こわっ!

 

けっこう怖いですよね。その方などは毎日、365日会食みたいな方なので言わなきゃ絶対病院に行かないわけですよ。そういうのを拾い上げるためにも気軽なコミュニケーションでできるってのはいいですよね、やばいサインを拾うことができますので。

 

髙橋:ダイエットしたいんですけど、みたいな感じの悩みでもいいんですか?

 

中田:あ、もちろんです。そういう相談たくさん受けていますし、ダイエットの方法も人によって最適な方法は全然違いますので。よくある低糖質ダイエット、糖質制限ダイエットもメリデメありますので、メリットは早く結果が出ることなんですけど、デメリットはリバウンドしやすいこととか、脂質の量が増えますからコレステロールバランス悪くなるとか、全然あります。

中長期で結果を出したいのか、結婚式に向けてすぐ痩せたいのかによっても変わりますしコレステロールが高い人なのか血圧が高い人なのかによっても戦略は変わります。結局一人一人に最適なダイエット法って違うんですよね。こういうのもデータを見なきゃわからないので、一般的にこうやれば痩せますとかおっしゃるトレーナーもいると思うんですけれども、本来は健康っていうことを考えたら一人一人にパーソナライズしないといい結果にならないですよね。

 

髙橋:なるほど。ありがとうございます。あと、予防医療でさっきの胃もたれみたいな事例があれば教えていただけますか?

 

中田:ありすぎるくらいあります、本当に。それこそ最近手術した方の例で、甲状腺のガンが早期で見つかったのでよかったんですけれども、なんかものすごい高額な人間ドックってのがあるんですよ。50万とか100万とかそういうやつ。でもやっぱり検査も高ければいいかっていうとそうではなくて、検査には必ず良い面と悪い面があるんですね。その方の場合は特殊だったんですけど、もともと持病で甲状腺のバセドウ病という病気をやっていたんですけど、この病気をやっていた人って炎症の痕がありますから、PET/CT検査で光っちゃうんです。でも、「これは病気の痕だから大丈夫ですよ」と判断されて放っておかれちゃうんですけど、本来はそういう人はPET/CT検査ではなく超音波検査をやらなきゃいけないんですよね。その方に「超音波検査をやった方がいいですよ」ってことでオーダーで受けてもらったらガンが見つかったっていうケースですね。高い人間ドックを受けて安心している人もいらっしゃいますけど、ものによって、領域によって医療はけっこうそうではない場合も多いのでやっぱり賢く選ぶのことが一番大事なんです。喜んでいただけた事例です。

 

髙橋:なかなか経営者の方って芳永代表みたいにずっとパソコンの前にいなきゃいけない方が多くて適度な運動ができていないと思うんですけど、そういうみなさん、特に入られた方がいいかもしれませんね。

 

(一同笑)

 

ウェルネスコミュニティっていうのはどういうものなのか教えていただけますか?

 

中田:一般的に予防医療には、一次予防、二次予防、三次予防とあります。

一次予防というのは病気になるリスクを減らすことです。たとえばワクチンを打つとか、食事を気をつけるとかです。
二次予防は早く見つけることなのでちゃんと人間ドックを受けることでやれています。

三次予防はすでに病気になってしまった人の再発を防ぐというものです。

最近はこれに対してゼロ次予防という概念がありましてゼロ次予防って何かといいますと、そもそも今いる環境が健康リスクを規定するという考え方です。たとえば実際に論文があるのは、めちゃめちゃたくさん食べて太っている人たちと一緒にいると何も意識していなくても太るとかですね。どういう人と一緒にいるかが健康状態を規定していくというのがあるんですよ。

僕らは、健康にお金を使って投資しよう、長生きを健康にしていこうという人たちのコミュニティを作ることによって、それによって仲間意識ができて継続していただけるとか紹介いただけるとかもちろんビジネス的な側面もありますけれども、どちらかというと健康の仲間づくりをして健康な人と仲良くなってもらうので、そもそもその人たちと過ごしているだけで健康になるような世界観を作りたいなっていうのがあるんです。

 

一同:なるほど!

 

ウェルネスの会員同士で一緒に食事したり、ゴルフしたり、サウナ入ったりとか、一緒に語り合う時間を定期的に作っていまして、そこで健康に意識の高い仲間を作ってもらう。それによって、健康を維持しつつ、かつビジネスも発展して遊び仲間もできる、みたいな世界観です。

芳永:中田社長のプロフィールに、幼少期アメリカにいたとありましたがなぜですか?

 

中田:父親が研究で行っていたのでそれについて行かされたというだけです。

父は外科医ですね。バリバリの外科医で、ザ・白い巨塔みたいな感じのドクターですね(笑)。

 

髙橋:お父様の背中をご覧になってああいうお医者様になりたいとかあったんですか?

 

中田:いいえ、むしろ反面教師だったというか。忙しいじゃないですか、医者って。それは尊敬はしていますけど、本当に忙しいので、母親と過ごす時間が全然ないのを見ていたし、僕も父と遊んだ思い出ってあんまりないんですよね。めちゃめちゃハードな仕事だなと。僕が医者を目指したのは、自分が喘息になったんです、4歳のときに。入院したときの主治医がすごく良いお医者さんだったんですね。先生と話すともちろん安心しますし、ただ病気の話だけするだけじゃなくて、最近幼稚園どうとか、学校どうとかそういう話をした記憶がすっごくありまして。医者であるまえに人間としてすごく尊敬できた方で、その仕事がめっちゃおもしろいなということで僕は総合診療医になったんです。結局どこかの臓器だけを見るっていうよりは、やっぱり人に興味があって医者になりましたので、寄り添っていく医者みたいなのを目指しています。だから今パーソナルドクターってことをやっているんです。原点からその影響かなと思います。

 

芳永:これから欠かせなくなるAIとの付き合い方についてご意見いただけますか?

 

中田:すでにAIのスペックもすごく高いですし、過去のデータから妥当な答えを導き出すのは、多分人よりAIの方が得意なんですよ。その答えがある程度わかったうえで、実際にどれを選ぶかというところに寄り添う人が必要だと思っています。そこは人間にしかできないところだから。そういう役割にどんどん価値が生まれていくんじゃないかなという気がしています。

 

髙橋:ウェルネスが目指す未来について教えていただけますか?

 

中田:まずはビジネスパーソンたるものお医者さんをつけましょうというのをまず当たり前にしていくというのが大前提としてあります。最終的なゴールはもちろん、全員がさっき言ったとおり後悔なく死ぬみたいなところを目指しているので、プロダクトの質を落とすということは絶対にやりませんけれども、ある程度単価を下げてより多くの人が使える世界を作るというのは一つあります。

さっき話していただいたとおり健康状態の可視化みたいな話なんですけれども、それはものすごく大事だと思ってます。なんで病気になるまで気づかないか、健康の大切さに気づかないかというと、健康が目に見えないからです。無形資産といわれると思うんですが、お金や不動産って目に見えるから分かりやすいんですけど健康は目に見えないのでみんな本当に症状が潜在化したりするのか分からない。ただ実際には体のデータとか生活習慣のデータとかっていうのを細かく取っていけばその人の健康状態って可視化できます。スコアリングできるんですね。これができればそれ自体がまず価値ですしたとえば保険に入ろう、家を買おうと思ったときに保険料があったり金利がかかったりしますよね。今って年齢と性別であらかた決まってしまうんですけれども、本来は健康な人ってそこで優遇されるべきだと思うんです。結局(本人が)倒れるリスクが低いとか不動産であれば30年後までローンを返しきれるかどうかって健康状態と関連しますよね。

健康状態が可視化されて将来の病気のリスクが予測できるようになったら自分が健康であることが何らかの保障になる時代が来ると思うんですよね。そうすると要は健康に投資をすることが、もちろん健康という目に見えない資産が手に入るっていうのもあるし金銭的にも得をするっていう時代が来ると思うんですよ。そういう時代を作ることができれば本当に全員が予防医療に取り組むようになるだろうと思っていまして、最終的にはフィンテックっていわれる領域ですけどヘルステックとかメディカルテックという領域でやってますけれども将来はこれを可視化してAIとかを絡めて予測できる世界を作って、この健康であることを金融価値に変換していける時代を作ろうとしています。

そうすると健康に投資をすることが、まず健康という最大の資産が手に入り、かつお金にも変わるというふうになるとやらない理由はなくなるので、そういう世界を作っていきたいなと思っています。

 

芳永:7つの習慣を書いた人のなかに人生には4つの窓があって、重要なんだけど緊急性がない窓が実は人生において一番大切だと。その領域って人間関係であったり健康であったり、そこだと思うんですよね。その領域を今まさに実践されていらっしゃって具現化されていらっしゃる中田社長。なんだか非常に楽しみですね。

 

中田:本当に健康ってすごく大事なんだけどいつ始めたらいいかわからないというか、まだ大丈夫なんじゃないかってみんなどうしても思ってしまうんですね。当然ですが経営も健康もそうですけれども早く取り組んだ方が最終的な結果は絶対良くなりますので、自分の健康と向き合ってみようかなと思った方はぜひ我々に頼っていただけたらなというふうに思います。

 

髙橋:ありがとうございます。

本日のゲストは株式会社ウェルネス代表取締役、中田航太郎様でした。

 

中田:こちらこそありがとうございました。

2024年5月30日収録

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