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【第4話】 2027年、前線からの離脱と「感性のデジタル化」

  • 執筆者の写真: ncu807
    ncu807
  • 4 日前
  • 読了時間: 4分

更新日:16 時間前

第1話からここまで、2028年11月23日という一つの確定未来を軸に、現在のNCU合同会社(研究会)が置かれている位置と、そこへ向かう道筋を言語化してきた。今回は、そのロードマップの中でも特に大きな転換点、あるいは「特異点」となるであろう一年、2027年について記したい。


前回は、2026年がAIとの本格的な協働を開始する実験の年になると述べた。その延長線上に位置する2027年は、私がこれまで固執し、ある種楽しんでさえいた「前線」での業務を、意識的かつ段階的に手放していく年になるだろうと予感している。ここで改めて、私にとっての「前線」とは何か、そして具体的に「何を手放し、何を残すのか」を整理しておく必要がある。


現時点における私の「前線」とは、極めて属人的な泥臭い実務の集積であり、同時にそれが組織の限界値ともなっている。

具体的には、毎週40件近くの面談をすべて私自身の身体と時間を使ってこなすこと。会員同士の紹介における最終的な判断を、すべて私の直感と経験則というブラックボックスの中で下すこと。そして、企画やコミュニティの方向づけを常に私自身が牽引し続けることだ。


良くも悪くも、現在の研究会は私のこの「物理的な介入」と「熱量」によって成立しており、そこに強く依存している。しかし、2027年においてはこの構造を根本から変革する。人間である運営メンバーを増やして権限委譲するのではない。私の役割と判断基準を「AI」へと徹底的に委譲し、システムそのものに人格を宿らせていくのである。


おそらく2027年には、面談やマッチングといった実務の大半を、高度に学習させたAIエージェントに任せる体制が整っているはずだ。

例えば面談であれば、初回や定型的なヒアリングはすべて対話型AIが担当する。AIは24時間365日体制で会員の声に耳を傾け、その膨大な対話ログの中から、私が介入すべき「ここぞ」というタイミングだけを抽出してアラートを出す。


私はその時だけ、生身の人間として対話の場に出ればよい。一本一本の面談に全精力を注ぐ「プレイヤー」から、面談という仕組み全体をどう設計し、AIにどのような対話の作法や美学を学習させるかを考える「アーキテクト」へと、私の職能は完全に移行しているだろう。


紹介業務についても同様のことが言える。これまでは私の頭の中にしかなかった「人と人との相性」という暗黙知を、AIによるアルゴリズムへと落とし込んでいく作業だ。これは単なる効率化ではなく、「私の感性をデジタル化する」という試みでもある。AIが候補者をリストアップし、一次的な適合判断を行い、提案までを完結させる。私はその結果を事後的に確認し、アルゴリズムの微調整を行うだけに留める。


そうなれば、私が体調を崩そうが、長期の不在であろうが、研究会というシステムにおける「出会いの創出」は止まることなく自律的に機能し続けることになる。

ここで肝要なのは、「AIに丸投げする」か「全部自分でやるか」の極端な二択に陥らないことだ。


AIの挙動には、初期段階では必ず「揺らぎ」や「違和感」が生じるだろう。私の感覚とAIの出力のズレを放置せず、少しずつ、無理のない範囲で権限を移譲していく。違和感があれば即座に手動に戻し、学習データを修正する。


2027年は、そのような繊細なチューニングをひたすら繰り返す一年になるはずだ。手放すことは、決して責任を放棄することではない。自らの役割を、現場のオペレーターから、システムを俯瞰するメタ的なレイヤーへと置き換えていく作業に他ならないのである。


同時にこの頃から、私は個別の判断よりも、研究会全体の「方向」や「温度」を整える役割、いわば「OS」の部分に比重を移していきたいと考えている。

AIは効率的なマッチングはできても、「どのような価値観を美学とするか」「どのような温かみをコミュニティに残すか」といった情緒的な決定権を持つことはできない。どのような速度感で広げていくのか、何を守り、何を許容しないのか。


こうした根幹にある思想(OS)を確認し、AIというシステムに血を通わせ続ける役目は、代表としての実務を降りた後も、しばらくは私が担い続けることになるだろう。

2027年は、私が一歩引く準備を整える年であり、同時に研究会が「代表がいなくても大丈夫だ」と、AIと共に静かに、しかし力強く証明し始める年になるかもしれない。


その時、私は少し離れた場所から、自らの手で育てたシステムが、自らの足で歩き始める様子を見守っていたいと思う。そこには「自分が不要になる」という一抹の寂しさもあるだろうが、それ以上の安堵と、組織としての進化に対する確信があるはずだ。


続く第5話、最終回では、その先に待つ「2028年11月23日」という節目と、その後の研究会が描く未来図について、今の時点での素直な感覚を綴ってみたい。

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