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仕事が問われるとき

  • 執筆者の写真: ncu807
    ncu807
  • 11月8日
  • 読了時間: 2分

営業という職を選ぶとき、正直に言えばかなり悩んだ。

きついノルマ、厳しい上司、苦手なお客。

そのイメージだけで、できれば避けたい職種のひとつだった。


だが、実際にやってみると意外にも面白かった。

もちろん辛いこともあったが、いま振り返ると「良いこと」の方が多かった気がする。

人と人が向き合い、言葉を交わし、想いを通わせる。

その瞬間にしか生まれない“何か”が、確かにそこにはあった。


この仕事は、商品を売ることのようでいて、本質は“信頼”をつくることだと思う。

相手の言葉に耳を傾け、その人の中にある小さな欲求や不安を感じ取りながら、一緒に答えを見つけていく。

だからこそ、効率や合理性とは真逆にあるような人間的な営みだとも言える。


ある社長がこう言った。


「自動販売機がどれだけ増えても、人は人から物を買う。営業は無くならない。」


その言葉に、私はどこか救われた。

自動化が進んでも、人の心は機械には代えられない。

そう信じて、日々の現場に立ち続けてきた。


ところが──

中国のスタートアップが、22万円で買えるヒューマノイドロボットを発表したというニュースを目にした。


名は「小布米(Bumi)」。

身長94センチ、体重12キロ。

歩き、踊り、会話をこなすという。

しかも、予約開始からわずか3時間で200台以上が売れた。


ロボットが家庭に入り、人のように振る舞う時代が、いよいよ現実になりつつある。


AIが商品の説明をし、顧客の反応を解析し、最適な提案を行う。

そんな営業支援ツールはすでに存在している。

では、それを人型のロボットが行う日が来たら──

私たちの“営業”は、何を価値として残せるのだろうか。


営業とは、人が人に寄り添う行為だ。

だが、もしロボットが「共感」や「温かみ」を演じられるようになったとしたら、それでも私たちは人から買うだろうか。


「営業は無くならない」という言葉を、私は今も信じたい。

しかしその意味は、これから少しずつ変わっていくのだと思う。

“人が人に売る”という形ではなく、“人が人らしさを売る”時代へ。


効率では測れない、非合理で、手間がかかって、それでも誰かの心に届くような仕事。

そこにこそ、営業という職の真価があるのではないか。


技術が進むほど、人間の“心”の価値はむしろ高まる。

ロボットが売る時代にこそ、私たちは改めて問われている。


人から物を買うとは、いったいどういうことなのか、もっと深く考えてみたい。



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