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信頼はコストである

  • 執筆者の写真: ncu807
    ncu807
  • 2025年12月27日
  • 読了時間: 2分

信頼は、簡単に崩れる。しかし、積み上げるのは決して容易ではない。信頼とは感情論ではなく、明確な「コスト」を伴う経営資源である。

ビジネスの現場において、信頼は数値化されにくい。だが実態としては、契約スピード、意思決定の速さ、修正コスト、離職率、さらには危機対応力にまで直接的な影響を及ぼしている。信頼がある組織では、確認や防御のための無駄な工程が少ない。反対に、信頼が崩れた瞬間、それらはすべて「管理コスト」として表面化する。

一方で、「そんなことで崩れる関係は、信頼ではない」という言葉もよく耳にする。理想論としては正しい。しかし、実務の世界で信頼は、想像以上に脆い存在である。

この本質を鋭く突いているのが、映画 万引き家族 である。血縁も制度も曖昧なまま、互いを必要として生きる人々。彼らの関係は社会のルールから見れば欠陥だらけで、是認されるものではない。しかし内部には、確かな役割分担と相互依存が存在していた。

物語の中で、その均衡はたった一つの出来事で崩れる。社会は彼らを「ルール違反」という一点で切り離し、関係性を無効化する。そこでは道徳ではなく、「その関係がどこまで許容される設計だったのか」が問われている。

これは企業経営でも同じである。不祥事、数字の未達、判断ミス。どんな組織にも起こりうる。一度の失敗で即座に取引を打ち切られる関係は、果たして信頼関係と呼べるのだろうか。実態は、条件付きの取引に過ぎなかったのかもしれない。

信頼はリスクを内包する。裏切らない前提で信じることではない。問題が起きたとき、どう対処するかを含めて信頼である。だからこそ信頼には時間と覚悟が必要であり、短期的には非効率に見える。

簡単に切れる関係ばかりを選ぶ組織は、長期的には必ず疲弊する。信頼を育てるとは、失敗時のコストも引き受けるという経営判断だからである。

信頼とは完成品ではない。検証され、揺さぶられ、時に損失を生みながら、それでも積み上げ続ける意思決定の連続である。積み上げるのは容易ではない。しかし、信頼を資産として持つ組織だけが、危機を越えて生き残る。

ビジネスにおいて、信頼とはそういうものである。


 
 
 

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