札幌の看板に教えられる
- ncu807
- 9月25日
- 読了時間: 2分
北海道札幌市。豊平川沿いにある運送会社の壁面に、一枚の看板が掲げられている。
「人を大きく上にして 心は丸く 気は長く 腹は立てずに横にして 己は小さく下にあれ」
これは、大友運送株式会社の社訓である。
初めてこの看板を目にしたとき、その不思議さと奥深さが胸に染み入った。咄嗟には言葉としてはわからないが、文字の大小で構成されるその看板は目に飛び込んでくる。そこには、経営にも人生にも通ずる深い示唆が込められている。
(※勝手に紹介してしまうが、気になる方はぜひ、ネットで探していただきたい。)
36歳で起業して以来、正直に言えば喧嘩ばかりしてきた。
目上の方に「おい、爺!」と噛みついたこともある。役所の対応に腹を立てて怒鳴りつけたこともある。仕入れ先に文句を言い、関係を壊したことも。。。。
振り返れば、恥ずかしいほど未熟だった。
「短気は損気」とはよく言ったものだ。天に唾を吐けば自分に返ってくる。そんなこともわからずに、持論を振りかざし、周囲との軋轢を恐れず突っ走っていた。
だからだろう。
あの看板を見るたびに、胸の奥で反省の鐘が鳴る。
特に「己を小さく下にあれ」という言葉が、いつも心に突き刺さる。
だが正直に言えば、その反省は長く続かない。気をつけようと思っても、どこかでまた怒り、愚行を繰り返してしまう。それはまるで猿の反省であり、大人のそれとは言えない。
私の経営者としての半生は、反省の連続である。失敗から学んでいるようで、実は学びきれていない。「もっと穏やかに」「もっと謙虚に」と思っても、すぐに感情が先に出てしまう。
還暦を過ぎ、ようやく少しずつ変わってきたように思う。
他人の言葉に耳を傾けるようになり、腹の虫も以前ほど騒がなくなった。怒りに燃えて夜も眠れない、そんなことはほとんどなくなった。だがそれでもまだまだである。道半ばである。
看板に書かれた言葉は、きっと社員や地域の人々への誓いとして掲げられたものなのだろう。だが、通りすがりの一人の経営者にとっても、それは深い学びを与えてくれる。
「人を大きく上にして」「己を小さく下にあれ」
この社訓は、単なる処世訓ではなく、人と人との間にある“余白の作り方”を示しているのかもしれない。
自分を主張するのではなく、相手を立てること。怒りに任せてぶつかるのではなく、心を丸く保つこと。言うは易く行うは難し、だがこの姿勢を持ち続けることが、経営にも人生にも確かな豊かさをもたらすのではないだろうか。
壁に掲げられたあの社訓は、今も私にそう問いかけ続けている。




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