転住という選択
- ncu807
- 10月31日
- 読了時間: 3分
弊社は東京に本社を置いている。
バーチャルオフィスで訪れることはほぼない。
居住地は札幌だ。
北海道の冬は寒い。
年を取ったので毎年のように移住を考えてしまう。
そこから、転住を思い付いた。
調べてみると、既に実践しているところがあるようだ。
好事例を見ながら考えてみたい。
たとえば、長崎県五島市では「子育てワーケーション」を打ち出している。
保育園や学校の体験入学を制度化し、家族ごと一定期間、島で暮らせるようにした。
これは単なる観光ではなく、「暮らしのリハーサル」である。
実際に子どもが学校に通い、親はリモートワークをしながら地域と関わる。
生活のリアルを試すからこそ、「本当に住めるかどうか」が見えてくる。
また、北海道の厚沢部町では「保育園留学」という試みが始まっている。
都市部で待機児童に悩む親たちが、数週間から数か月、地方の保育園で子どもを預けながら暮らす。
一方で、地方の保育園は定員割れという課題を抱えていた。
この制度は、都会の“悩み”と地方の“課題”を交換することで、双方の幸せを生み出している。
まさに、課題を資源に変える行政知恵といえるだろう。
私が考える「冬だけ移住」も、これらと同じ発想の延長線上にある。
一年を通して定住するのではなく、季節やライフステージに応じて場所を変える。
そんな“グラデーション型の移住”が、これからの社会の主流になっていくのではないだろうか。
今やテクノロジーの発展がそれを容易に後押ししている。
バーチャルオフィスやクラウドワークの仕組みを使えば、会社の住所を東京に置いたまま、自分は別の土地で暮らすことができる。
物理的な距離が、もはや制約ではなくなりつつある。
一方で、人間は土地に根ざして生きる存在でもある。
空気の匂い、近所の人の声、食卓に並ぶ野菜。
その“生活の実感”を取り戻したいと願う人が、少しずつ増えている。
だからこそ、「いきなりの移住」ではなく、一時的な滞在という段階が重要なのだと思う。
もし自治体がこの流れを後押しできれば、人口流出の問題にも新しい風を吹き込めるだろう。
たとえば、バーチャルオフィス登録企業への補助、中期滞在プログラムの整備、地域通貨による地元消費の循環など。
それらを組み合わせることで、「定住」を強要することなく、関係人口を持続的に育てることができる。
人生のリズムが変わるたびに、住む場所を選び直す。
そんな柔らかな生き方を、制度が支えられる社会になってほしい。
寒い冬の日に、ふと北の街を思い浮かべながら、私はそう感じている。




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