通過点は常に超えるためにある——「経営者育成研究会」3年の軌跡と未来
- ncu807
- 2 日前
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三年前の2022年12月17日。私はふと、当時記したブログを読み返していた。
その時点で、私が主宰する「経営者育成研究会」は、立ち上げてようやく一年が過ぎたばかりであった。今振り返れば、それはまだ荒野に芽が出たばかりの、あまりに小さな場であったと言わざるを得ない。
当時の状況を克明に思い返す。Facebookグループの参加人数はようやく500名を超えた直後。経営者対談イベントは39回目を目前に控えていたが、活動の中心はFacebookライブ配信に依存し、YouTubeチャンネルも開設したばかり。まさに「手作り」と呼ぶにふさわしい組織であった。
「対談に出てもいいよ」と快く貴重な時間を割いてくれた経営者の皆様に対し、深甚なる感謝の念を抱きつつも、当時の私の内心には「この挑戦がどこまで続くのか」という、一抹の不安が常に張り付いていたのも事実である。
消えない「原体験」の熱量
それでも今日まで歩みを止めずにこられたのは、私の根底に焼き付いて離れない、ある強烈な「原体験」があったからに他ならない。
それは26年前に目にしたテレビ番組、『堀場雅夫の心はベンチャー』である。起業を決意し、期待と不安が入り混じる混沌の中にいた若き日の私にとって、第一線で活躍する経営者が語る“本音の対談”は、道標であり、魂を震わせる熱源であった。
「ああいう場を、自分もつくりたい」
その純粋かつ衝動的な思いだけを頼りに、私は一人ひとりの経営者に頭を下げ、一回一回の対談を積み重ねていった。当時の目標は極めてシンプルに「まずは500名の場をつくること」。それを「やっと通過点として越えた」と、当時の私は安堵と共に書き記している。
三年を経て、変容した景色
あれから三年。2025年現在、経営者育成研究会は明確にその姿を変容させた。
Facebookグループは目標としていた1,000名を超え、経営者対談は180回以上を数えるに至った。ビジネスマッチングの実績は累計4,000件に達し、活動媒体もFacebookやYouTubeにとどまらず、書籍出版やリアルイベントの開催へと多層的な拡張を遂げている。
三年前には存在しなかった「対談アーカイブが資産として残る仕組み」が整い、経営者の金言が時間を超えて次の世代へと届くインフラが構築された。しかし、何より大きな変化は、当会が単なる交流グループの域を脱し、**「判断の質を高め合う経営者コミュニティ」**として広く、深く認識され始めたことであろう。
数字以上に変わったもの
正直に言えば、人数や回数といった定量的拡大自体は、本質的な目的ではない。この三年で最も劇的に変わったのは、ここに集う経営者たちの「温度」と「深さ」である。
語られるのは、表面的な成功談ではない。意思決定の際の迷い、失敗の裏側、そして誰にも言えなかった孤独な葛藤。そうした本質的な対話が、対談やコメント、あるいは個別のやり取りの中で極めて自然に行われるようになった。弱さをさらけ出し、互いの知恵とする。これは三年前の私には想像もできなかった、尊い変化である。
三年前のブログに、私はこう書いた。「実は一番それを知りたい、学びたいのは自分かもしれない」と。
今、はっきりと言える。その通りであった、と。
180回以上の対談を通し、私は数え切れないほどの経営観・人生観・覚悟に触れてきた。当会は、誰かを育てるための場であると同時に、私自身が最も育てられ、経営者としての視座を鍛えられてきた道場であったのだ。
未完成という名の矜持
2022年12月、私は「やっと通過点にたどり着いた。これからだと思っている」と結んだ。三年経った今も、その感覚は一点の曇りもなく変わらない。
1,000名という数字も、180回の対談も、4,000件のマッチングも、すべては通過点に過ぎない。経営者育成研究会は、完成することのない組織である。完成がないからこそ、追求し続ける意味がある。
この三年という月日は、私一人では決して辿り着けなかった境地である。時間を割いてくれた経営者の皆様、運営を支え続けてくれた仲間、そして視聴し、参加し、関わってくれたすべての方々。この場が今も脈動しているのは、間違いなく「人」の力によるものである。
これからも、私たちは一人では進まない。
経営者育成研究会は、経営者が孤独に陥ることなく、正しく判断し続けるための「思考のインフラ」として、静かに、しかし確実に、その歩みを積み重ねていく所存である。




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