ノーはイエスの前菜
- ncu807
- 7月25日
- 読了時間: 2分
営業をしていれば、大きな案件の失注は誰しも経験する。とくに若い頃は、その一件に全力を注いでいるだけに、落ち込むことも多い。だが私は、失注の直後にこそ次のチャンスがあると考えている。実際、私には忘れられない経験がある。
リコー時代、300万円のオフィス機器を提案していた商談があった。最終判断をもらう日に、上司が同行してくれた。だが商談は最初から雲行きが怪しく、社長の空気は「断りモード」一色。上司は手を変え品を変え、なんとか成約に持っていこうと頑張ってくれたが、打開の糸口はなかった。
私は、途中からその空気を察し、ある言葉を待っていた。
「わかりました。」
それは上司が諦めの合図だった。そしてその瞬間、私はすかさず大きな声でこう言った。
「社長!これだけお願いします!」
そう言って、ずっと渋られていた30万円の機器の入れ替えを提案した。結果、その契約をすんなりいただくことができた。金額は十分の一だが、これは単なる穴埋めではない。関係をつなぐ小さな「イエス」であり、次の商談につながる第一歩だった。
この経験から学んだのは、大きな「ノー」の直後にこそ、小さな「イエス」が生まれやすいということ。相手も断ったことで少し心に引っかかりがある。そこに誠意を持った別の提案を出せば、受け入れてくれる可能性が高まる。
もうひとつ、私が大切にしているのが「ノーを取りに行く」営業スタイルだ。あえて少し無理な提案を先に出し、相手に断らせることで、主導権と納得感を渡す。そのあとに現実的な本命の提案を出すと、すんなり受け入れられることがある。
これは駆け引きではない。相手の立場に立って、本音を引き出すための誠実なコミュニケーションである。営業はロジックだけで動かない。最後に「この人から買いたい」と思ってもらえるかどうか。感情を読み、流れを作り、信頼を積み上げる。それが営業の本質だと、私は今も信じている。
これを読んで私が何か無理なお願いをした後は
「これかぁ!」と思わないで欲しい。
当然ネタバレを承知で書いたのだからその時はニッコリ「イエス」を返してね!




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