過去の意味は変えられる
- ncu807
- 3 分前
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歳を重ねると、悲しいことが増えるように感じる。
この季節になると体の冷えが気になり、昔よりずっと堪えるようになった。
焼き肉を食べても、脂の多いカルビより赤身を選ぶ。
もう一品、大盛り──そんな言葉とも縁遠くなった。無理をすれば胸焼けが起きるからである。
還暦を過ぎるとボヤキが多くなる、とよく言われる。確かに自分でもそう思うことがある。だが、それは弱さよりも、長く生きてきたことの副産物なのかもしれない。
経営の現場に長くいれば、思い出すのは成功の話よりも、苦しかった場面の方が多い。
人の記憶とは、そういうものだと思う。
ただ、同じ出来事でも「いま」の状態によって見え方が変わる。
不調のときは、過去の失敗が今のしんどさをさらに重くする。
「ああ、どうしてまたこんなことが」と思い、落ち込むこともある。
しかし調子が良いときは、同じ出来事を「越えられた経験」として扱うことができる。
あの時できたのだから、今回も何とかなる──そんな感覚が生まれる。
経営でも似たことがある。
数字そのものは変わらなくても、状況が変われば判断が変わる。
赤信号にも見えるし、チャンスにも見える。
結局のところ、景色よりも、見る側の状態がものを言うのである。
過去は変えられない。
だが、過去の意味は変えられる。
そこに年齢を重ねる価値があるように思う。
悪いことばかりは続かない。
そのことを、これまでの経験が静かに教えてくれる気がする。
